発刊:2017年
出版:誠信書房
これまで精神科(心理)臨床において、大半の臨床家は患者に焦点を当てるという「個をみる」ことから出発し、その病理を捉え、治療を行うことを習い性としてきました。著者はそれに抗するように、母子臨床の経験に基づく「関係をみる」ことから、こころの病の成因と治療を案出してきました。そこで辿り着いたのが「関係をみる」臨床では「感性を磨く」ことが必須であるという確信でした。人間科学においても「理性」重視の傾向は否めず、「感性(感じること)」は科学になじまないものとして捨象されることが多いのです。今日のデジタル社会はその傾向に拍車を掛けています。面接において臨床家自らが「感じること」の意味と意義について、著者は「感性教育」という独自の教育実践を通して、具体的に論じています。なかでもとりわけ学生の語る体験談は、現代の教育で見失われている「感性」を育むことが主体的な学びと深く繋がっていることを教えてくれます。